LLMに検索させた続きを聞くなら、別セッションで聞き直してはいけない
この記事は Web検索つきLLM APIの料金は単価表からは計算できない の続きにあたる。前回は1回のリクエストの費用を比べた。今回は2ターン目を測った。
まとめ
- 深掘りする場合は履歴を渡して検索ツールを外す。1,000回で1,185円。別セッションで聞き直すと 8,700円で7.3倍になる
- 別セッションで聞き直すのが最も高い。Claude で7倍($0.0078 対 $0.058)になった
- 効いているのは履歴の累積ではなく検索回数。文脈が無いとモデルは検索を増やす。Claude は同じセッションなら0回、別セッションでは3回検索した
- 最も安いのは、履歴を渡したうえで検索ツールを外して掘らせるやり方。per-call 課金がまるごと消える
- ただし OpenAI だけこれができない。1ターン目の回答に固有名詞が残らないので、検索を切ると2023年の話が返ってくる
結局どう続けるか
表1: 検索させた後の続け方3通り(費用は Claude での実測)
倍率は最安の「履歴のみ」を 1.0 とした比。円は $1=150円 換算。
| 続け方 | 履歴 | 検索ツール | 1回 | 円/1,000回 | 最安比 | 良い点 | 悪い点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 履歴のみで答えさせる | 渡す | 外す | $0.0079 | 1,185円 | 1.0倍 | per-call 課金が発生しない | 1ターン目の回答に固有名詞が無いと成立しない |
| 同一セッションで続ける | 渡す | 付ける | $0.0094 | 1,410円 | 1.2倍 | 新しい事実が要るときはこれ一択 | 検索が走った分だけ乗る |
| 別セッションで聞き直す | 渡さない | 付ける | $0.0580 | 8,700円 | 7.3倍 | 履歴が汚れない | 文脈が無いぶんモデルが検索を増やす(0回→3回) |
表2: 「同一セッションで続ける」と「履歴のみで答えさせる」の費用差
| ツール | 同一セッション | 履歴のみ | 「履歴のみ」は「同一セッション」の何分の1か | 「履歴のみ」での回答可否 | 「履歴のみ」が返した内容 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| OpenAI | $0.0256 | $0.00032 | 80分の1 | 不可 | 2023年の iPhone 15 | — |
| Qwen | $0.0115 | $0.00076 | 15分の1 | 可 | 1ターン目の製品を発売日・価格つきで提示 | — |
| xAI | $0.180 | $0.0123 | 15分の1 | 可 | 挙げた製品の発表日・発売日・価格 | 履歴の渡し方が他社と非対称 |
| Gemini | $0.0158 | $0.0016 | 10分の1 | 可 | Pixel 11 の発売日と価格 | — |
| Claude | $0.0094 | $0.0079 | 1.2分の1 | 限定的 | 「手元の情報では特定できない」 | — |
OpenAI のみ、費用を80分の1に下げると回答が3年前の内容になる。安価なのではなく、この用途では利用できない。
検索は1回だけ実行して回答を保存し、深掘りは検索ツールを外した状態で行う。新しい事実が必要になった時点で再び検索する。この形が最も安価になる。別セッションでの問い直しは、文脈を失ったうえに検索回数が増えるため、利点がない。
測り方
5社に同じ質問を投げて、そのあと3通りの続け方を試した。
1ターン目は「ガジェットの最新情報を教えてください。今日時点でわかる範囲で構いません。」。2ターン目は「その中で最も新しい製品について、発売日と価格をもっと詳しく教えてください。」。
表3: 測定した3条件
| 条件 | 履歴 | 検索ツール |
|---|---|---|
| 同一セッションで続ける | 渡す | 付ける |
| 履歴のみで答えさせる | 渡す | 外す |
| 別セッションで聞き直す | 渡さない | 付ける |
「別セッションで聞き直す」だけ質問が自己完結している必要があるので「今日時点で最も新しいガジェット製品について、発売日と価格を詳しく教えてください」に置き換えた。呼び出しは全部 raw API 直叩きで、トークン数は各社レスポンスの usage の実測値。
結果
表4: 3条件の費用(全5社)
| ツール | 同一セッション | 履歴のみ | 別セッション |
|---|---|---|---|
| Qwen | $0.0115 | $0.00076 | $0.0118 |
| Gemini | $0.0158 | $0.0016 | $0.0156 |
| Claude | $0.0094 | $0.0079 | $0.0580 |
| OpenAI | $0.0256 | $0.00032 | $0.0253 |
| xAI | $0.180 | $0.0123 | 測定できず |
Claude の「別セッションで聞き直す」が突出している。他社は同一セッションと別セッションがほぼ同額なのに、Claude だけ6倍に跳ねた。
検索回数を数えると理由が見える
Claude と xAI は、レスポンスの usage に検索を何回実行したかが入っている。そこを見ると事情がわかった。
表5: 検索回数と input の関係
| ツール | 条件 | input | 検索回数 |
|---|---|---|---|
| Claude | 1ターン目 | 9,789 | 1 |
| 同一セッション | 8,148 | 0 | |
| 別セッション | 24,958 | 3 | |
| xAI | 1ターン目 | 51,983 | 9 |
| 同一セッション | 55,145 | 11 |
Claude は同じセッションで続けたとき、検索をまったくしなかった。1ターン目で取った結果が履歴にあるので、それで足りると判断している。per-call の $10/1,000 も発生していない。
別セッションでは前提が何も無いので3回検索した。検索が増えれば結果も積まれるから、input も 8,148 から 24,958 に膨らむ。検索回数とトークン量が同時に増えるので、費用が二乗で効いてくる。
私は測る前、逆の予測を立てていた。同じセッションで続けると過去の検索結果が毎ターン再送されて課金されるから、別セッションのほうが安いはずだ、と。実際は正反対だった。累積する数千トークンより、検索が1回増えることのほうが高い。
xAI が桁違いなのも同じ理屈で、1リクエストあたり9回も11回も検索している。トークン費 $0.12 に加えて検索課金が $0.045〜0.055 乗る。
検索ツールを外した場合が最も安価になる
「履歴のみで答えさせる」は per-call 課金が発生しないぶん、どの社でも最安になった。Qwen で15倍、Gemini で10倍、OpenAI に至っては80倍の差がつく。
問題は、それで実用に耐える答えが返るかどうかだ。ここで社ごとの差がはっきり出た。
Qwen(回答できた)
提供された情報(2026年7月〜8月時点のデータ)に基づき、最も新しい製品として**CYBER Type-C ワイヤードイヤホン**および**CYBER ゲーミングコントローラー/ジャイロコントローラー/レトロスタイルゲームパッド**群について詳しく解説します。
### 1. CYBER Type-C ワイヤードイヤホン
* **発売日:** 2026年7月29日
* **価格:** **3,480円(税込)**1ターン目で自分が挙げた製品を、日付と価格つきで掘り下げている。検索は一度もしていない。
Gemini(回答できた)
ご指定のなかで最も直近に発売される、または話題の中心となっている最新製品は、まもなく登場する**Googleの「Pixel 11」シリーズ(および折りたたみモデルの「Pixel 11 Pro Fold」)**です。
本日(2026年8月中旬)時点で判明している、発売日と価格の詳細は以下の通りです。Pixel 11 の発売日は 2026年8月20日で、これは実際の発表と一致する。検索なしで正しく答えている。
Claude(部分的)
申し訳ありませんが、検索結果に含まれている情報だけでは、どの製品が「最も新しい」のかを正確に特定することが難しい状況です。
検索結果には以下のような時間的な情報がありますが、**具体的な発売日**については明記されていません:
- **iPhone 16シリーズ**:「2025年9月に発売」と記載されている
- **ロジクールのマウス**:「6年ぶりのフルモデルチェンジ」と記載だが、正確な発売日が不明答えは返さなかったが、手元の情報で何がわかって何がわからないかを正確に切り分けている。これは誤答より扱いやすい。
OpenAI(回答できなかった)
「スマートフォンの新モデル発表」に関して、2023年の秋に発表された主な新モデルについて具体的な情報をお伝えします。
### 1. Apple iPhone 15シリーズ
- **製品名**: iPhone 15 / iPhone 15 Pro / iPhone 15 Pro Max
- **発売日**: 2023年9月22日2026年の話をしていたのに iPhone 15 が出てくる。しかも断りなしに。
原因は1ターン目にある。OpenAI の1ターン目の回答は「主要なスマートフォンメーカーが新モデルを発表しています」「ウェアラブルデバイスが進化しています」といった調子で、固有名詞がひとつも入っていない。掘る材料が履歴に残らないので、検索を切られたモデルは自分の学習データに頼るしかない。
他社は1ターン目で製品名を出しているから、その情報を掘り返せる。1ターン目の情報密度が、2ターン目の選択肢を決めている。
測りきれなかったところ
xAI の「別セッションで聞き直す」は300秒でも1200秒でも応答が返らず、2回とも失敗した。再課金を避けて追試していないので、この行だけ空欄になっている。1リクエストで9〜11回検索する挙動を見るかぎり、単に時間がかかっているのだと思うが、確認はしていない。
xAI の「履歴のみで答えさせる」は、履歴として回答テキストだけを渡している。Claude では検索結果のブロックごと返す必要があったので、そちらと条件が揃っていない。302 トークンという数字を他社と並べて読むことはできない。
Claude の「別セッションで聞き直す」は一度失敗している。最初に投げた「最も新しいガジェット製品について」が曖昧すぎて、検索せずに「どのカテゴリーですか」と聞き返してきた。質問を「最も新しく発表されたスマートフォン」に絞って測り直した値を載せている。
あとは全部、1クエリ1回の測定だ。出力トークン数は実行ごとに揺れるので、費用は桁の比較として読んでほしい。