「計画する」を分解するとAI時代の生存戦略が見える
まとめ
- ある記事は「依頼された仕事をやらない人」の本質を「考えるのが嫌」と診断し、処方箋として「考えなくていい仕事に閉じ込めろ」と提案している
- しかしその処方箋が指す領域は、ちょうど今 AI が一番得意な領域と重なる
- 「計画が苦手」を 8 要素に分解すると、AI で代替できる部分と人間に残る部分がはっきり分かれる
- AI に食われるのは「計画が苦手」全員ではなく、着手できない人 + 考える行為自体を避ける人の合わせ技に限られる
元記事の論点
要約するとこうなる。
- 「やります」と引き受けたのに動かない人がいる
- マネジメント手法・能力不足では説明できない
- 残る説明は「面倒になった」「色々考えるのが嫌」という性質
- 対処: 考えなくていい単純作業を与える、得意な仕事だけを切り出す
世間の 3 割は「考えるのが嫌」な層、という引用も併載されている。
引っかかった処方箋
「考えなくていい仕事に閉じ込める」が処方箋として書かれているが、ここで一つ気になる点がある。
- 完全に手順化できる仕事 = AI/RPA が代替可能な仕事
両者がほぼ重なる以上、処方箋に従って「考えない仕事」のポジションを彼らに与えても、そのポジション自体が消えていく。記事自身が「会社の中に立案・計画が不要な仕事は減っている」と書いていて、処方箋と現実が逆走している。
「計画する」を分解する
「計画が苦手」と一語でくくられるが、計画行為は複数のステップの合成だ。
表1: 計画行為の8要素
| # | 構成要素 | 詰まり方 |
|---|---|---|
| 1 | 現状把握 | 今どこにいるか言語化できない |
| 2 | ゴール解像度 | 終了条件を自分で描けない |
| 3 | ギャップ認識 | 現状とゴールの差分を具体化できない |
| 4 | 分解(抽象→具体) | 抽象タスクを具体作業に割れない |
| 5 | 順序付け | 依存関係が見えない |
| 6 | 見積もり | 所要時間が読めない |
| 7 | 不確実性処理 | 答えが見えないと止まる |
| 8 | 着手判断 | 計画できても最初の一歩が出ない |
各要素の AI 代替度
表2: 計画の8要素 × AI代替度 × 人間に残る役割
| # | 構成要素 | AI代替度 | 人間に残る役割 |
|---|---|---|---|
| 1 | 現状把握 | △ | 観察・取材・関係者ヒアリング |
| 2 | ゴール解像度 | ◯ | お題のオーナーシップ、価値判断 |
| 3 | ギャップ認識 | ◎ | 現状とゴールを渡すこと |
| 4 | 分解 | ◎ | 粒度の合意 |
| 5 | 順序付け | ◎ | 組織固有の制約の提供 |
| 6 | 見積もり | △ | 自分の速度・組織のオーバーヘッド補正 |
| 7 | 不確実性処理 | △ | リスク許容度、最終決定 |
| 8 | 着手判断 | × | 実際に手を動かす身体的行為 |
AI が完全代替できる(◎)のは 3, 4, 5。「分解と整理」の塊。半分代替(△)が 1, 6, 7。「現実情報の入力」と「意思決定」が必要な部分。代替できない(×)が 8。「最初の一歩を踏み出す」という身体的アクション。
詰まりタイプ別: AI で救われるか
「計画が苦手」をメカニズムで分けると 5 タイプに分かれる。
表3: 詰まりタイプ × AIで救えるか
| タイプ | 主な詰まり要素 | AIで救えるか |
|---|---|---|
| (a) 認知資源不足 | 4, 5, 6 | ◎ 救われる |
| (b) 不確実性耐性が低い | 7 | △ 半分救われる |
| (c) 抽象↔具体が弱い | 2, 4 | ◎ 救われる |
| (d) 実行機能の弱さ | 8 | × 救えない |
| (e) 考えること自体が嫌 | 全部 | × 救えない |
(a)(c) の人は、AI が分解・整理を肩代わりすれば一気に「計画できる人」に化ける可能性がある。 (d)(e) は、AI が計画してくれても着手しない、あるいは AI を使う行為自体に「考える」が必要なので、救えない。
AI時代の役割分担
元記事は「やらない人」を一つの性質として描いているが、実際は能力 × 性格 × 状況の合成物で、AI を挟むと運命が大きく分岐する。
表4: AIで救われる層 vs 食われる層
| 層 | 詰まりタイプ | AI を挟んだ後の振る舞い |
|---|---|---|
| 救われる層 | (a)(b)(c) | 計画の中間工程(分解・順序付け)で詰まっていた人。AI が肩代わりすれば動ける |
| 食われる層 | (d)(e) | 着手できない + 考えること自体が嫌の合わせ技。AI でも代替できないし救えない |
AI が代替するのは「計画の中の計算可能な部分」だけで、観察・意思決定・着手の 3 つは人間に残る。
逆に、AI 時代に「計画できる人」として価値を出す道筋は明確で、1(現状を言語化する)、2/7(価値判断と最終決定)、8(着手する) を担い、3〜6 は AI に投げ返せばいい。「計画が苦手」と言われていた人にとっても、この役割分担が成立すれば、過去のレッテルから抜け出せる可能性が残っている。