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上長への不満で失敗しない出し方 — 事実の食い違いと判断への不同意を混ぜない

上長の進め方に納得がいかず上位者へ相談したら、内容ではなく「不満」として処理された。準備の量は関係なかった。何を混ぜたのが敗因だったのかを整理する。

上長への不満で失敗しない出し方 — 事実の食い違いと判断への不同意を混ぜない

まとめ

  • 出すものを「事実の食い違い」と「判断への不同意」に分ける。混ぜると全部が不同意として処理される
  • 場を新設しない。新設すると中身の前に、その場を作った正当性を問われる
  • 上位者へ持ち込んだ時点で、内容が何であれエスカレーションになる。中間はない
  • 目的が「知ってもらう」なら、相手は人ではなく記録。都度 1 件ずつ残す

会議は最初の 5 分で崩れた

上長の進め方に納得がいかず、その上長を外して、さらに上の 2 人に同席してもらう場を作った。60 分、論点は 5 つ。2 か月分の議事録とチケットを集め、全部に日付と出典を付けた。資料としては、たぶん今まで作った中でいちばん丁寧だった。

説明を始めて 5 分で、こう返ってきた。

何を伝えたいかがよく分からないです。何が問題なんですかね

1 つ目の論点は「上長が意思決定をする。そこに違和感はない」で処理された。残り 4 つは議題に到達しないまま時間切れになり、最後に出た評価は「自分のやり方が通らないから納得できないと聞こえた」だった。

準備の量は関係なかった。5 つのうち、反論されずに宿題として記録に残ったのは 1 つだけで、それは日付と発言が特定できる食い違いだった。残り 4 つは、全部わたしの判断だった。

出すものを 2 つに分ける

表1: 出し方の選定フロー

手順 判断すること 結果
1 出すものは事実の食い違いか、判断への不同意か 不同意なら 1 回言って引く。以降は出さない
2 事実の食い違いなら、既存の場があるか(1on1・定例・チケット・評価面談) あればそこに載せる
3 既存の場が無い、または上位者に持ち込む必要があると感じた 持ち込んだ時点でエスカレーションになる。関係が変わってよいと決めてから使う

既定は「事実の食い違いだけを、既存の場に、1 件ずつ」。積み上がるのはこの形だけだからだ。

表2: 2 つの型

相手の返し方 出す場所 積み上がるか
事実の食い違い 先月の決定と今月の決定が違う。方式を変えたのに見積もりが元のまま 反論できない。確認するしかない 記録に残る形で、都度、本人へ 積み上がる
判断への不同意 別の方式のほうがよい。この体制では無理がある 「上長が決めること」で終わる その場で 1 回言い、記録に残して引く 積み上がらない。繰り返すと「不満」になる

不同意そのものは正当だ。ただ、正当さと通りやすさは別で、判断の当否は最後まで水掛け論になる。一方で「先月こう言われて、今月こう変わった」には返しようがない。相手にできるのは、なぜ変わったかを説明することだけになる。

混ぜると、強いほうが弱いほうに引きずられる。5 つ並べたうちの 4 つが不同意だったので、残りの 1 つも不満の一部として読まれた。

中身を読まれる前に負ける二つの理由

新しい会議を作ると、まず「なぜこの場を作ったのか」が問われる。中身の検討はそのあとだ。今回もらった指摘は、資料への評価ではなく場への評価だった。総理大臣にいきなり減税を直訴するようなもので、然るべき順序がある、という趣旨のことを言われた。

既にある場に載せれば、この問いは発生しない。1on1 も定例も評価面談も、そこで話すことが制度上あらかじめ認められている。同じ内容でも、載せる場所で扱いが変わる。

上位者へ持ち込むと、内容が何であれエスカレーションになる。ここに中間はない。所見をもらうつもりで、実質は直訴をしていた。

資料には課題を 5 つ並べ、「どう見えますか」とだけ書いた。決定を求める場にはできないと考えて、意図的に要求を外した。

これが逆に働いた。何をしてほしいのか書かれていない資料は、読む側からすると「何かを通そうとしている」か「困っていると訴えている」のどちらかに見える。会議の終わりにもらった注文は、まさにそこだった。課題が何で、こうしてほしい、をまとめてほしい、と。

要求を書けば通るという話ではない。要求がないと、書いていないものを相手が推測して埋める。埋まるのはたいてい、こちらの不満だ。

「知ってもらう」の相手は人ではなく記録

現状を知ってほしかった。3 年我慢して、さすがに一度言っておきたかった。同時に、通したい要望もあった。両方あったのが問題だった。

拾われたのは要望のほうだ。そこから話は「個人の主張ではなく、リーダーの立場を考えろ」へ移り、そこで止まった。要望を一つでも混ぜると、現状の共有まで個人の主張として扱われる。事実と不同意を分ける話は、実は要望と共有のあいだにも当てはまる。

そもそも、進め方が無茶苦茶だという評価は、渡そうとしても渡らない。無茶苦茶さは個々の事実の集まりでできていて、集まりは時間をかけないと形にならない。一度にまとめて出せば訴えになり、訴えには人物評価が返ってくる。

だから相手を人から記録に変える。決定が変わったその日に、チケットのコメントで確認する。「先月はこうでしたが、認識を更新したほうがよいでしょうか」。返答があればそれが残り、なければ返答がなかったことが残る。

半年経っても、それ自体では何も起きない。相手が認識を変えることもない。変わるのは自分の手札で、評価面談でも体制の相談でも、主観ではなく履歴として出せる状態になる。出さずに終わることもある。使うかどうかは、必要になったときに決めればいい。

次に同じ状況が来たら確認する 4 問

資料を作り始める前に、自分に聞く。

  1. この場で何が得られれば成功か
  2. それは既存の 1on1 や定例では得られないか
  3. 出そうとしているのは、事実の食い違いか、判断への不同意か
  4. 上長を飛ばす形になるが、そうなってもよいか

今回はどれも聞かずに、依頼された形をそのまま磨いた。文言は何度も直した。構造の欠陥は一度も見直していない。

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