内製化が成立するかどうかは、会社の規模ではなくオーナーシップの所在で決まる
AI ネイティブな内製プロダクトを続けてきた人の投稿を読んだ。強い意志が持てないと社内受託になり、よく分からない製品ができ、作り込みでスパゲッティになる。だから内製化が成立するのはごく一部で、10 人くらいの会社か 1 万人くらいの会社なら成立するが、その間は厳しい、という話だった。
前半には全面的に同意する。ただ後半の「間のレイヤーは成立しない」だけは、原因の取り違えだと思う。
規模で切ると打ち手が出ない
10 人で成立するのは、作る人と決める人が同じだから。1 万人で成立するのは、専任のプロダクトオーナーを置くだけの人員的な余裕があるから。中間が苦しいのは「中間だから」ではなく、オーナーが兼任になるからだ。事業部長が片手間で見る、情シスの部長が兼ねる。この形になると、要求の優先順位を決める権限が誰にも無い。決められないから全部作る。作り込みでスパゲッティになる。
軸を規模からオーナーシップの所在に置き換えると、中間規模でも成立するケースが説明できるようになる。
表1: 同じ「内製化」でも結果が分かれる例
| 条件 | 結果 |
|---|---|
| 300 人・専任の PdM を 1 人立てた | 成立する |
| 5000 人・現場からの依頼を全部受ける窓口体制 | 社内受託になる |
規模軸だと前者を説明できず、後者を「成立するはず」と誤判定する。実用上もっと大きいのは、規模で切ると打ち手が人を増やす/減らすしか出てこないことだ。オーナーシップで切れば、専任を 1 人立てるという具体的な手が出る。
専任を置いただけでは足りない
ここまでで終わらせると、たぶん失敗する。専任は必要条件であって十分条件ではない。
専任の PdM を置いても、要求を断る権限が無ければフルタイムの御用聞きになるだけだ。むしろ窓口がはっきりしたぶん依頼が集中して、状況が悪化することもある。要るのは「作らない」と言える立場のほうで、役員直下に置くとか、事業の P/L の責任を持たせるとか、そういう手当てとセットでないと機能しない。
専任にすべきなのはオーナーで、開発者ではない
内製化をエンジニアの採用の話として読むと、ここでもう一段ずれる。エンジニアは業務委託でも回る。回らないのは、何を作らないか決める役目のほうだ。あれは外に出せない。順序としてはオーナーが先で、開発体制はその後。
そして、そのオーナーを 1 人抜けないなら、内製化しないほうがいい。SaaS を買うか外注したほうが結果は良くなる。中途半端な内製は外注より高くつくうえに、資産も残らない。元の投稿の「成立するのはごく一部」というのは、突き詰めるとここを指しているのだと思う。
判断としては、内製化できるかを「エンジニアを採れるか」で測るのをやめて、作らない判断ができる専任のオーナーを 1 人立てられるかで測る。立てられないならやらない。